日本人の英語 世界のなかでのレベルとコンプレックスとその理由

ここ数年、日本で英語への関心が急速に高まっている。

情報ポータルサイトでもいつも英語に関する記事がアクセスランク上位にきているし、ユニクロ楽天が社内公用語化を発表したときの喧騒は記憶に新しい。
この関心の高さは、日本人の英語に対するコンプレックスと、急速に縮んでいく国内市場のせいで高まる企業の海外志向が明らかになってきたことが合わさっての現象でしょう。

企業の海外志向のほうの話は今日はおいとして(これはこれで興味深いけど)、日本人の英語コンプレックスあるいは苦手だという事実そのものについて書いてみる。


日本人は本当に英語が苦手?

日本人が、個人によりバラツキがあるのは当然だとして、全体的に見ると英語が苦手だというのは事実で、これは現状としては認めざるを得ないでしょう。

5年ほど前、ある中東の国で、ある女性と話したとき
「あなたは韓国人なの?」
「いや、日本人だけど」
「へぇー、英語喋るから韓国人だと思った。だって日本人ってほとんど英語しゃべらないでしょう、今までここに来た日本人も云々・・・」


このときぼくは軽いショックを受けました。
そんなに愛国心が強いつもりはなかったので意外ですが、外国でこう言われるとやはり日本人として少なからずショックを感じるようです。とても瞳が大きく髪の長い若くて美しいアラブの女性に、アクセントのないきれいなアメリカ帰りの英語で言われるとなおさらです。

でもその後よくよく見てみると、どうやら多くの人がこのような印象を持っているようなのです。
印象だけではなく、実際に日本に行ったときに如何に英語が通じなかったかを楽しそうに話す外国人は多い。もちろん英語ネイティブの人だけではなく、フランス人もエジプト人もメキシコ人も。


英語が苦手な理由

でもいったい何が理由なのでしょう。

大きく言うと以下の3つだと思います

                    • -

1.言語、音の近接性
日本語と印欧言語の言語としての遠さがまず1番の理由でしょう。
フランス語やドイツ語の文章を翻訳サイトで英語にしてみてください。ほとんど間違いのないきれいな英語になります。そう、彼らは基本的には単語を置き換えていけば英語を話せるのです。もちろん細かい語法や、語順、時制の考え方などは異なりますが、その距離は非常に近く、英語−ドイツ語の距離が自分といとこくらいの関係だとしたら、英語−日本語は継母の連れ子の友だちくらい離れています。

また音の問題もあります。日本語には音が少ないため、英語に含まれる音の多くが聞き取れないか、区別がつきません。また日本語では子音は必ず母音を伴うので、子音だけの発音や、子音が続く発音が聞き取れません。これは学習上大きなハンデです。

2.日本人の意識
日本は、歴史上ほとんど国境が変わらない国土の中に、1つの民族が1つの言語をつかって1つの国家を形成している稀有な国です。
日常的に外国人と触れる機会も少ないうえに、ビジネス上でも今までは成長する1億人以上の市場を国内に抱えていて、外を見る必要がありませんでした。

ヨーロッパでこどものおもちゃを買うと8ヶ国語くらいで説明が書いてあるのは珍しくありません。(説明書が8冊ついているのではなく、8言語並記)。1つ1つの市場が大きくないので、わざわざ違う仕様で国内専用のおもちゃを作ったり、取り扱い説明書を作るとペイしないという単純な理由です。こんな環境で育つと、日本人とは外国語に対する意識が違ってきそうですよね?

3.教育
これはよく言われていることですが、2.日本人の意識、に大きく関係しているのでしょう。日常のツールではなく、「語学」として勉強するもの、という意識が強いので、コミュニケーションの訓練ではなく、「勉強」になってしまう。外国語を話すためにほんとうに必要なのは訓練、あるいは慣れです。

ただ勘違いしてほしくないのは、中学、高校でやる文法くらいはとても大事だということです。ここで成績のよかった人は、将来コミュニケーションの訓練をしたときに飛躍的に伸びて、きれいな英語を話せるようになります。逆にここを押さえずに、コミュニケーションの訓練だけをやってしまった人は、ペラペラと話すけれども、文法も語彙もメチャクチャで通じてはいるけどまず教養のある対等な人として相手はみてくれないし、それなりの話題しかされなくなります。
実際海外で働いていても驚くような英語を話したり書いたりする人はたくさんいます。

                    • -

実はそれぞれの理由をもっと詳しく書き始めたのですが、あまりにも長くなり過ぎることに気がついたので、また別の機会に書くことにしてとりあえず要点だけ書きました。
気が向いたときにまた書きます。ほんとうは理由だけじゃなくて、どうすればいいの?についても。


英語はたかがツール

仕事において英語はたかがツールです。
仕事においてほんとうに大事なのは、顧客にとっての付加価値を生み出すことでお金を払ってもらうこと、自分の給与を稼ぐことです。その他のことは、それを実現するためのツールに過ぎません。
英語も、営業スマイルも、ファイナンシャルリテラシーも、ITスキルもすべてツールなのです。

されどツールなので、今パソコン(メールやエクセル)が使えない人に仕事を任せられないように、今後は英語ができない人には仕事を任されなくなってしまうのでしょうね。
残念なことですが。市場が縮小するというのはそういうことなのです。


鋭い人は気がついたと思いますが、実は、1つ有効な解決方法が。そう、子どもをたくさん作って少子化を解消すればいいのです。

ではまた。